ハーバードER記

Ars longa, vita brevis.

AHLS終了。

はるばる隣の州、コネチカットまで行ってきました。


「NYとボストンの間には何もない」と言われてしまうコネチカットですが(YaleやBrownの先生方ごめんなさい)、今回休みを利用して、AHLSのコースに参加してきました。AHLSはAdvanced Hazmat Life Supportの略。HazmatはさらにHazard Materialの略ですね。つまり危険性物質が健康に影響を及ぼした場合の医療者の対応に特化したコースです。


内容は、アンモニアから始まって、サリンなどの有機リン放射線被爆、もちろんお国柄もあって天然痘炭疽菌バイオテロまで。範囲を広くカバーします。参加者は主にコネチカットロードアイランドからのEMSの人たち。HAZMATへの対応は病院前での除染、初期治療が大事ですからね。医者は僕一人でした。。。


毒物の病態生理や、antidoteなどは勉強済みなことも多く復習になった程度でしたが、救急医として勉強になることも多々。僕は恥ずかしながら勉強不足なので、Hot zone, Warm zone, Cold zoneなど知りませんでした。Hazmat casualtyのポイントは、HAZMAT対応の基本である除染(Decontamination: こっちでは皆、ディーコン!と発音しています。)とABCが常に優先されることですね。さらにWho:誰が、何人が、Where: どこで、How: どのような経路で、What:何にexposureされ、どのような症状を示しているかをシステマチックに考えることもポイントですね。救急医としては、EMSによって運ばれた患者さんに対応することが仕事ですが、日本に帰った時のことを考えると広くシステムを学ばなければいけないと考えています。


さらに印象に残ったのは、祖国日本からの事例の多さ。Caseとして取り上げられたものの1/3から1/4は日本のものだったのではないでしょうか。たとえば:
1. 広島、長崎の原爆
2. 東海村事件
3. Tokyo Sarin Attack
4. オームによるボツリヌス菌散布未遂
などなど。情報がある程度公開されているからこその事例数かもしれませんが、日本は安全だなんてとても言えませんね。米国は我々の国の失敗から真剣に教訓を引き出し、危機管理に結びつけようとしています。つねに世界のどこかで戦争をし、軍隊を派遣し、テロの標的にされるアメリカだからこそ危機管理の意識は強いのでしょう。しかし過去の事例から普遍的な教訓を引き出し、体系化し、マニュアルに落とし込んでいく上手さは学ぶべきです。我々は自分たちの過去からどの程度学んだのでしょうか。身の引き締まる思いをした2日間でした。


田舎ですが紅葉がきれいな消防士学校でした。


これはWarm Zoneで患者さんを除染しおえたところ、これからCold Zoneに移し、治療が始まるところ。