ハーバードER記

Ars longa, vita brevis.

医師と疲労

EM AllianceのMLに書いたものですが、ブログのネタ切れを防ぐためにこっちにも。
医師、とくに救急医の健康管理は自分にとっても、patient safetyにとっても大事なことですよね。僕も今年は準夜勤と夜勤だけなので生活が乱れます。昼間働きたいですよね。


米国でさえ、医師、看護師とくに研修医の過重労働は問題になっています。医療関係者と同じようにHigh Riskな仕事をする、原子力発電所職員や飛行機のパイロットではありえない労働時間。医療にお金も人も大不足している日の丸医療界ではもっと深刻ですね。24時間勤務後の判断能力は、アルコール血中濃度0.1%のそれに相当するというデータがあります。Nature 1997;388:235-235。酒気帯び運転の閾値はたしか0.15%です。
(一方で外科レジデントの試験結果は当直明けでも優位差はなかったなんてデータも出してる人がいますが。。)少なくとも僕はこんな医者に診てもらいたくはない。


長期的には医師を増やし(医療費も増やし。ただし日本国民が医療の質の担保を希求するのならばの話ですが)、患者/医師/資源の偏在を改善していくしかない。でも短期的にできることも考えなければいけない。個人の権利にうるさいこの国ではどうでしょうか。


こちらでは2003年から80 hrs ruleというルールが導入されています。レジデントは週に(一ヶ月平均してですが、、)80時間しか働いてはいけないということです。きっかけになったのは1984年、NYで当直明けの研修医がSerotonin Syndromeを見逃し。18歳の患者さん, Libby Zionがなくなり、NY Timesの記者であった両親がこれを訴えたことから始まりました。まずはNY州の法律で80時間ルールがきまり、2003年からはACGMEという米国のレジデンシーの大元締めによって全国規模になっています。


ACGMEの他のルールは例えば、
�救急シフトは週60時間以内、シフト間は10時間あける
�月に4日の休暇をとる
�連続勤務は30時間まで。当直明けは6時間しか働けない
などなどです。けっこうしっかり管理されていて、守れないプログラムはACGMEによって監視下におかれたり、最悪の場合はプログラムおとりつぶしということも。実際にはうちの外科を中心にけっこう守られていませんが、プログラムディレクターは神経質になっています。


全国規模のシステムを別すると、各プログラム毎にそれなりの工夫があるのだと思います。日本のように仕事後の飲み会で研修医の精神状態をそれなりにチェックできるといった文化がありませんから、メンターをつくったり、プログラムディレクターと定期的に面談するといった工夫を僕のところではしています。


僕も夜3時間寝るとぱっちり目がさめるようになってしまいました。Sleep Hygieneが最悪です。