ハーバードER記

Ars longa, vita brevis.

気道コース

ボルチモアまで行ってきました。

Dr. Levitanによるairwayコース。
米国の救急気道管理コースには、大きく分けてRon Walls(僕のボス)のコースと、このDr. Levitanのコースがあります。
前者は気道管理のプロトコールと薬剤の使用に重点。後者は、ご遺体を使った練習でプラクティカルなもの。両者それぞれ売りがあるようです。


Wallsのコースは、レジデントであればいつかは無料で受けることができる(はず)なので、とっておきます。今回はLevitanのコース。http://www.airwaycam.com/
2日間で1,500ドルほどするのでとってもきついですが、ボルチモアまで行ってきました。レジデンシーが出してくれればいいのですが、Levitanのはさすがに出ないでしょう。

コースの一日めはひたすら、レクチャー。彼の信念はシンプルであること、実践的であること。いかにも臨床家の視点。
ライバルWallsのことはあまり好きでないのでしょう。なんども彼の話がでてきます。僕はWallsのお膝元から来た初めてのレジデントということで、何でここに来たんだといわれつつ、少し嬉しそうでした。実践面で多くのTipsを習い非常に勉強になります。一方で、やはりアルゴリズム、薬剤の使用法(Wallsのものもかなりシンプルになってきました)、その背後にあるサイエンスについてはWallsに一長があるようですね。でも、気道の解剖、ETTの先端が気管に当たるので時計回りに回転させながら挿入、などなど実践的で勉強になりした。僕は知らないことばかり。


2日めは、メリーランド大学の解剖ラボへ。18人のCadaverを目の前にするのは、医学部入学3日めのデジャブですね。久しぶりの感覚(と嗅覚)。あとはひたすら挿管です。これは非常によい。やはりテクニックはシミュレーションマネキンでは学べない。そして18体をひたすらローテーションしながら挿管するというのは、たまにやるのとは全然違う。一体一体、いかに喉頭の解剖が違うかがわかる。それぞれの解剖にいかに対応するかを身をもって学べる。普段そう頻繁に使用しない、fibroscope, ブジー、LMAや他のsupraglottic deviceの練習になる。あまり使い慣れない人には、glidescope, c-mac, McGrath, airway scopeなんかも練習できます。ビデオ喉頭鏡はかならず、5-10年後にはdirect laryngoscopeを置き換えると思っています。まあ出血とか嘔吐だらけでは見えませんから、そのときのためにDLを使いこなせるのは大事。でもglidescopeとか簡単ですもん。


僕の好みはC-MAC。カーブがマッキントッシュのDLに似ているため、DLの感覚で喉頭展開できます。画像の質もよし。DLに慣れた人はこっちが好きなんだと思います。
Glidescopeは、カーブがきついので、挿入方法とスタイレットでちょっとしたコツが必要。クビを伸展できない外傷にはいいと思ってます。
たしか日本人の脳外科医が発明したAirway Scope。僕の好みではありません。画像はいいのですが、ETTのtipのコントロールが効きづらい。見えるのに入らない、という感じ。
もうひとつ、Dispoのビデオ喉頭鏡(AirTraq)がありました。質は少し下がりますが一個90ドル。これなら予算のない救急部でも、持っておくのはいいと思います。イタリア海軍による発明。
レスキューデバイスは大事。換気にはレスキューとしてLMAを、挿管には最低ブジー、できればビデオ喉頭鏡かファイバーの2段重ねが必要だと思います。


痛い出費ですが、非常に勉強になったと思います。挿管>100回以上、Cricoを2回(誰かのを奪い取りました)はPriceless。Airwayのサイエンスが好きだし。そしてAirwayは救急医の要。いい臨床医になりたいですから、行ってよかったです。


そうそう、ボルチモアでは沖縄時代の親友Sと会ってきました。以前にも書きましたが、今は外科レジデント。
二人で、メリーランド病院のオンコール部屋で話していると、不思議な感慨におそわれるものです。残念ながら彼は移植のナイトフロート(夜勤だけの週)。話をする時間が少なくて残念でしたが、またの機会があるでしょう。


日本で体系的に救急気道管理を学ぶ場って少ないですよね。すくなくとも僕は何にも知らなかった。いつかはEMAの仲間とでAirwayコースを立ち上げたいと企んでいます。