ハーバードER記

Ars longa, vita brevis.

3/16 Stuart参加

晴れ。朝食は缶詰のパン(最近はこんなものがあるのですね。悪くはない)とイワシにカロリーメイト。美味しくいただいた。今日は午後7時からの12時間夜勤とすることに。

午前中は昨日チェックした人を中心に回診などをしておく。
災害医療に入ると、やりたいことが多すぎてどうしても働きすぎてしまうのは全体的な傾向のようだ。長丁場かつ一人一人に大きな責任があるがゆえに、心身ともに健康でなければならない。シフトを組みそれを守る「努力」をする必要がある。自戒を込めて。


そうこうするうちに、うちの救急部のStuartも到着。彼は岩手県岩泉で英語の教師を2年間していた人。日本に強い愛着があり、援助のためにやってきた。日本語をかなり忘れているため、僕らもどのように彼を活かすか頭をひねる。


昨日の回診の広告効果か、患者さんでごった返す。今日は100人ほどの受診。
10人ほどのminor外傷がいた。十分な治療をこれまで受けておらず、きれいな傷とは言えない。もう縫う訳に行かないので、洗浄、wet to dry dressing、日々のwound checkとする。破傷風トキソイドがないのが痛い。これは備蓄に入れるべきだ。


他の患者は風邪や花粉症といった通常の疾患。高血圧、糖尿病といって慢性疾患のフォロー。災害にあっても日常の疾患がなくなる訳ではない。しかし我々は慢性薬を持たないから対処できず申し訳ない思いをする。かかりつけ医の半分も被災したこと、ガソリン不足のため市民病院まで患者が行けないことなどから、彼らも困っている。本部に欲しい薬リストを作り要請するが、慢性疾患への対処は我々だけでは難しい。
地元医療機関とのチームプレーが非常に大事となる。保健所の方と話すと、朝8時に保健師さんにまとめて個人の処方リストを作り、代表者が市民病院までピックアップすることとなった。

その他の疾患は、避難所特有と言える不安、不眠、便秘。あのトイレでは便秘になるだろう(1200人に対してトイレは10個くらいしかない)。


その他の3チームは、本吉でのER/巡回活動に一つ、壊滅的打撃をうけた南三陸に2チームとなった。南三陸国境なき医師団がはいっていると彼らが広告していたのだが、数人しかおらず夜間の診療ができていないらしい。ボランティア団体と入っても、政治的側面もあるのだ。そこでT会に支援要請が入る。南三陸の1200人+500人規模の避難所に彼らは向かった。


残った我々は医師4名、看護師4名、運転手1名、ロジスティック1名のチームとなった。
災害支援は戦場と似ている。指揮官=コマンドリーダーがおり、実際に実働するoperation部隊(僕はこれ)、東京本部にいるplan部隊、対外交渉する部、そして非常に重要なのが兵站=ロジスティックだ。体一つで医療を提供することはできない。それには食料、水、医薬品、医薬物品、運搬手段、そのためのガソリンなど多くの物品がなければ動けない。また各チームの連携を有機的に図るためにロジスティック担当によるコミニケーションが不可欠だ。とくに携帯電話さえ使えない災害現場では衛星電話(これさえも上手くつながらない)を活用するロジが活躍する。


日頃から、ロジを含めた災害チームによる講習を行っているTMATは素晴らしい組織だ。もちろん完全な組織ではないが、素晴らしい取り組みだ。