ハーバードER記

Ars longa, vita brevis.

リスクマネージメント

アドミンの月も終盤に差し掛かってきました。M&Mも終了しホット一息。
今週はCRICOという医療リスク管理/患者安全の企業で勉強しています。これがかなり勉強になります。
レジデントにもリスク管理は大事ですが、来年からアテンディングになるとなると、これは真実味を帯びてきます。


CRICO RMF (risk management foundation)という企業は、1970年代の医療訴訟「クライシス」を背景にできた会社。基本的にはハーバード大学関連病院(20個くらいあるはずです)が中心となって設立されています。当初は医療訴訟に対する保険、弁護士の手配、弁護側にたつmedical expertの手配などの訴訟対策として始まりました。


徐々にこの企業もいい意味で成長。現在ではpatient safety organizationとしても認定。利益の7%をグラントとして患者安全プログラム、教育プログラムを各病院で行ったり、レジデンシープログラムにリスク管理のグランドラウンドを行ったりと、リスク管理のコンサルの方向に進んでいるようです。面白いですね。ブリガムの救急部でもプログラムが始まります(MGHは少し話が遅れている)。medical informaticsのコンサルはやっていないようですが、各病院のリーダーシップが集まる機会を作り、経験を共有できるようにしているようです。例えばBIDMCの救急のmedical informaticsはかなり進んでいる。これを僕らも吸収できたらいいですね。ブリガムもmedical informaticsをサブスペシャリティーにしている救急医を何人か採用しているが、導入は2015年とのこと。


企業にお邪魔して何をしているかというと、医療訴訟の実際、保険の成り立ちを話し合う。医療訴訟専門弁護士の話を聞く。今日は2時間ほど使って、実際にあったケース(もうcloseしている)を分析。明らかにスタンダードから離れたケースやシステム改善につながるケースなど様々。かなりM&Mに分析は似ています。
ホームページを見るとdeidentifiedされたケーススタディなども載っています。


ご存知のように、救急医療はハイリスク産業。救急外来はオペ室やICUとならぶエラーの起こりやすい場所。
会ったことのない患者と非常に短時間に人間関係を築く必要がある。
その患者は、ただの風邪から死に至る疾患をもっている可能性がある。質は様々で、病状はたいてい不明確。
医療資源は限られている。

それにしては、救急外来は何とか上手くやっているようです(改善の余地は多いが)。claimの絶対数は外科と産婦人科よりは大分すくない。(ちなみに救急レジデントの訴訟保険は月1000ドル。大したものですが脳外科よりはずーと安いとのこと)しかし全国のclaimをよく見ると、学ぶところは多い。その半分以上は診断関連、1/4は治療関連、あとに患者の安全管理、薬剤と続きます。さらに診断関連を詳しく要因を見ると、病歴/身体所見、検査のオーダー/解釈に問題があることが大多数。勉強になります。


個人的リスク管理の「まとめ」(組織としてのリスク管理、システム改善は別)
ーちゃんと臨床をする(基本)
ー患者さん、家族、チームとのコミニケーション
ーカルテをしっかり記載する(マサチューセッツではアウトカムが発生してから3年以内なら訴訟を起こせる。3年も経ったら忘れて当たり前)
やはり基本をしっかりですね。