ハーバードER記

Ars longa, vita brevis.

この国の医療訴訟

この国に来てビックリしたことはいくつもありますが(9割は悪いこと)、
弁護士がテレビのCMを使って医療訴訟の患者集めをしているのには驚きました。


今日もそんなことがあって
NEJMに載った1〜2年前の研究を思い出しました。
NEJM: Malpractice Risk According to Physician Specialty


米国では一年あたりに7.4%の医師が医療訴訟を受けます。
つまり13~14人に1人ですよ。しかも毎年!
賠償金は一件あたり平均2800万円。


訴訟を受ける割合を専門別に分けると、救急は真ん中ほど(意外)。
それでも救急医(リスクの同程度の内科医の数字を採用)を続けていると、
45歳の時点では55%
65歳では89%
が訴えられるとのこと。これは研修医も例外ではありません。
まあ、いつかは医療訴訟を受けるという前提でやっていくしかないようです
(ボスにもそう覚悟せよ、と言われています)。


この背景は多面的で根深いです。
一因としては弱者に対する社会保障の貧弱さ。
例えば小児の場合には、医療過誤の有無にかかわらず、医療訴訟による賠償金でしかその子の支援をする手段がないことが多々あります。


医療をめぐる一つの面。
患者、医療者、保険者全てがハッピーになるシステムはどうできていくのでしょうか。
少なくとも米国で働いている救急医は暗い現実を見ることが多いです。