ハーバードER記

Ars longa, vita brevis.

気道管理における施設差

医療行為自体そして質に地域差、施設差があることは良く知られています。
米国の救急医療でも
病院前心停止の救命率の差(これはマズいというくらいの格差。アラバマの路上で心停止したくありません),
喘息発作へのガイドライン遵守度のバラツキ
などなど、例をあげるのに困ることはありません。



おそらく日本の救急医療でもあるはずです。しかしまだまだその実態は明らかではありません。
そこで、救急のドグマ-ABC-のAirway (気道管理)に注目したスタディがあります。
日本の若手研究者による多施設前向き研究(Japanese Emergency Airway Network-1 [JEAN-1])スタディを利用した研究があります。昨年までに4000件以上の気道管理症例を蓄積。

Emergency airway management in Japan: Interim analysis of a multi-center prospective observational study.
その中間解析である論文では、
 挿管方法(例:rapid sequence intubationの施行率は施設によって0%-79%)、
 施行一回めにおける成功率(40%-83%のばらつき)
 施行三回以内の成功率(74%-100%のばらつき)
などに大きな施設差が報告されました。



ところで「施設差がある」ということはどういうことなのでしょうか。
確かに多くの患者因子、施設因子が影響していることでしょう。
救急外来での気道管理のように確固としたエビデンスがいまだ確立されていない分野では、医師の裁量が大きくなることもあります。しかしそれだけではないはずです。


差がある=改善の余地がある、ということです。
ある場所はよりベスト・プラクティスに近く(ベストかどうかは不明)、
一方である場所はそこに届いていないということ。



まずは現状を測定することから医療の改善は始まります。
次に、その差のdeterminantは何なのか、
ベストなプラクティスは何なのか、
それをどう現場に落とし込むのか、
その知見によってどんな介入をするのか、を考える。
そしてまた介入の結果の測定をする訳です。



救急気道管理に関しては仲間の研究が大きな一歩となるはずです。