ハーバードER記

Ars longa, vita brevis.

adminの月

レジデント最終学年になると、実際シフトに入るのは年の半分(!)

他は、選択2ヶ月、中毒1ヶ月、教育1ヶ月、管理運営一ヶ月、(休暇一ヶ月)と、ちょっと風変わりの勉強が多くなります。これは4年制レジデンシーの特徴かもしれません。給料が一年間余計に安い分、面白い経験をさせてもらえます。


僕も選択2ヶ月(今年も大学院に使いました)に続いて、今週からはadmin (管理運営)の月に入りました。全然臨床をやっていないので不安になります。とにかくここで何をやるかというと、


1. 救急部のリーダーシップの会議にでて、経営、運営、質管理などを学ぶ
2. Steve Bohan先生という臨床はやってないけど、リーダーシップと政策だけに専念している人と議論
3. CRICOというmedical malpracticeと患者安全に特化した会社の会議に参加(一番人気)
などと、かなり面白い体験が出来ます。来年からはアテンディング(大丈夫か?)ですから、患者さんと自らのリスク管理、救急部内のリーダーシップ、経営の視点などを学ぶことが出来そうです。楽しみです。


なんといっても今月のハイライト?はM&Mカンファレンス。うちのプログラムは4年めレジデントが順繰りに担当します。(外傷カンファレンス、教育カンファは別にまわってきます)その準備はだいたい一回のカンファレンスに40-50時間。かなり、しっかりやります。BWHは救急部の質管理がかなり進んでおり(Jay Schuurという若手ですが質管理のエースがいます。これから彼の名前を聞くことが多くなりそう。MGHは質改善で遅れている)、びっちり1対1で鍛えられます。


まずはカルテレビューから。調べる患者は、
1. 救急外来で死亡した患者
2. 入院24時間以内に死亡した患者
3. 病棟に入院させたのにICUにアップグレードされた患者
4. 退院させたのに戻ってきた患者
5. その他M&Mのemail boxに投稿された症例 (誰でも問題症例を投稿できるように)
6. 他の部からのsafety reportのあった症例などなど。
担当の一ヶ月分だけでかなりの量。これをしっかりチャートレビューするのはかなり労力がかかります。しかも手書きの部分は象形文字並みに読めません。というか本当に解読不能。


一つ一つの症例のどこに着目するかというと、以下の3つのポイント。
A. どの症例が質改善につながるヒントを持つか(アウトカムが必ずしも悪い必要はない)。とくにシステムエラーを見つけ、システムの改善につなげる。
B. アウトカムの悪かった症例
C. standard of careから外れた症例 (これは法律用語、その時点で、その地域の、その病院のリソース内での標準的なケアという意味です。モンタナの診療所とボストンのアカデミック病院ではstandard of careは違う訳ですね)
あたりの3ポイントを視点として、症例を総なめ。

ここからM&Mケースを抜き出していきます。
次には、どの症例を発表するかを選定。
そして、関係者にインタビューして、実情を調査。当事者がいなくても、司会の僕が全て対応できるくらいにするのが理想。


これから3週間後に発表です。素晴らしい体験ですが、かなり大変でもあります。
M&Mカンファレンスに出席するだけでも、いつも謙虚な気持ちにさせられますが、このように厳しく症例を見ていくプロセスはもっと身が引き締まります。


医学書院のMedicinaの22回連載も終わり、それを本にすべく作業中。M&Mについての本になるので、この経験をうまく伝えることができたらなと思っています。