ハーバードER記

Ars longa, vita brevis.

失神

昨夜の当直は失神のオンパレードでした。


6人の入院のうち5例が失神でしたが、見落とせないものたちです。

# WPWにA fibの合併。Procainamideとcardioversionでsinusに。

# 高齢者の失神。胸痛なしですが、2nd enzymeがポジ。EKGでも側壁に0.5mmほどのSTDあり。TIMI3のNSTEMIですね。85歳を過ぎるとMIも胸痛なしの患者が2/3をしめますから、高齢者の失神、呼吸困難、嘔吐、発汗などは要注意です。

# 中年女性のこれまた失神。階段を登っている間に失神。患者さんも気づきそうなほどの心雑音で、TTEしてみるとやはりAVA 0.7, mean gradient 81mmH20というsevere AS。

# これも高齢者の失神。椅子に座っている間に前兆なく失神。けっこうハイリスクです。EKGでは新しい右脚ブロック。鑑別はconduction abnormality, ischemia, medicationといった感じ。週明けにTTEしてstructureをみないとですね。原因がわかるでしょうか。

# これは興味深い症例。健康な若年男性。上気道症状、腹痛と嘔吐、そして失神。EMS現着時脈拍120、血圧50台。EKGはa-fib with RVRでdiffuse STD。EDで生食6Lでも血圧90台。患者さんによると同じことが年に数回にもあったとのこと。Stepdown Unitに来ると、かなり見ためがsick。lactate、腎機能もあがってきてこれはMICUレベル(あっちは夜間でもレジデントも3人いますしね)と判断。すぐにtransferしました。sepsis, viral myocarditis(インフルエンザも含め)なんかがもっともありそうですが、変な免疫不全、マラリア、Mediterranean Feverなんかもあるのかもしれません。要フォローです。
(SDUにエコーがあれば、fluid statusとだいたいのLVEFがわかってよいのですが、ここにはありません。日本はもっと普及していていいですよね。)


救急現場では失神はいろいろなdecision ruleがありますよね。Decision rule全盛期ということもあります。
しかしSan Francisco ruleも最近のvalidationでは感度がイマイチですし、あの5つだけではバラエティーにとんだ失神の鑑別を拾いきれません。Boston criteria (うちの卒業生がつくりました)なんかは、項目が20-30個もあってdecision ruleになっていません。頸部外傷のNEXUS/Canadian ruleや足首ねんざのOttawa ruleみたいにシンプルな疾患にはdecision ruleは働きます。しかし失神のようなheterogeneousなものにdecision ruleをどこまで適用できるかは僕は疑問を持っています。


とにかく失神には見逃してはいけない鑑別を念頭(心原性の失神は治療なしで一年死亡率20-40%ですからね)に入れて、病歴と所見をとることですよね。鑑別はこんな感じでしょうか:
1, CV-Ischemia: 虚血性疾患
2, CV-Rhythm: WPW, LQT, Brugada, HOCM, AV block
3. CV- Pump/structure: CHF, HOCM, AS,
4, Vascular- AAA, dissection, PE
5. Bleeding: GI bleed, Ectopic pregnancy
6. Neuro; SAH, ICH

heterogeneousな症候群に対しては常識的なアプローチがやはりいいのではと思っています。