ハーバードER記

Ars longa, vita brevis.

DO YOUR JOB!

 

 Bill Belichick

"Listen fellas, it's about doing our jobs. Just cover your man. Do what you're supposed to do.  We're trying to make too big many plays, and we're not doing what we're supposed to do. Playing the under-thrown ball. Tackling. Jamming the receivers. Just play the defense. That's all we've got to do. They're not giving us anything we haven't seen before. There are no scheme plays. It's just disciplined football."

 

GO PATS!!!!

チームドクターになる



今年よりBoston Bruins (プロアイスホッケーチーム)のチームドクターになることになりました。昨年、ゲーム中に選手が心停止となったケースがあり、NHL (National Hockey League)によって救急医の専属が義務となったようです。


NFL (New England Patriots)のゲームは何度かやりましたが、あれは観客の対応(主に酔っぱらい、年に数度の心停止や心筋梗塞)が仕事。。。今回からは選手対応ですからひと味違う。


今年はホームゲーム44試合のうち約10試合をカバーします。
明後日の開幕戦に備えて、今日は医師チームと救急隊とのドリル。

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人生ってわからないことだらけけど、これほど予測不可能なことはなかった。。。
10年前以上にホッケーをやっていた頃には想像にもしなかったことです。

Larry Brilliant at the HSPH Commencement 2013

昨年の卒業式にて。

心に残った言葉を思い出しました。

変なガウンのせいで暑くて仕方なかったのもいい想い出。。。

 

"Whether it was Dr. King or someone else who first imagined the arc of the moral universe bending towards justice, you can be damn sure they did not mean that history bends towards justice if we're sitting on our asses.

 

Look around you. The outside world is far from automatically justice. It is a battle for the poor, a battle for justice, a battle to lift the health of the public.

 

Here is what I ask of you. Imagine that arc of history that M. L. King inspired us with. It's right here. The arc of the universe needs your help to bend towards justice. It will not happen on its own.

 

The arc of the universe needs your help to bend towards justice. It will not happen on its own. The arc of history will not bend towards justice without you bending it. Public health needs YOU to ensure health for all. Seize that history. Bend that arc. I want you to leap up, to jump up and grab that arc of history with both hands, and yank it down, twist it, and bend it. Bend it towards fairness, bend it towards better health for all, bend it towards justice!

 

That's your noble calling of public health."

 

 

Vince Lombardi, Jr.

 

 

 

"The difference between a successful person and others is not a lack of strength, not a lack of knowledge, but rather in a lack of will."

 

うちのボスのオフィスにあったポスター。

 

 

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こういうのを貼るのは彼らしくないが、きっと座右の銘なんでしょう。

 

50歳を超えてfull professorにも関わらず平日は深夜1~2時まで、週末もオフィスで働いている、"perseverance"そのものの人です。要求が厳しく癖が強すぎるゆえに一緒に働ける人は少ない(僕は不思議と大丈夫だが、多くの人はダメらしい)のはちょっとした愛嬌です。

アメリカンバイアス

完璧ではない論文の査読システム。

 

査読付きの雑誌に投稿すると、「その領域のエキスパート」ということになっている(?)査読者のレビューが帰ってきます。まず少なくとも半分の査読者の質は低く(研究自体がわかっていない、論文をちゃんと読んでいない←後者は論文に問題のあることも多い)、査読者を逆に(やんわりと)教育してあげることが重要です。

 

査読者の質の低さにイライラすることは日常茶飯事ですが、今までで査読コメントに憤る、という体験は今回が初めて。日本で仲間とやっている多施設研究、後輩が初めてfirst authorとして投稿した論文に査読コメントが帰ってきました。論文自体は切り口はオリジナルで臨床に応用でき、なかなか面白い内容。

 

コメントの一部だけ抜粋します。

Review Summary:  Even those being addressed, the data presented would be difficult to generalize to US academic centers.  The authors express this in their limitations section however I believe it is a bigger limitation than stated.  It therefore may be reportable but have limited US applicability.


注:投稿したジャーナルは米国系の雑誌ではありません。BMJ系の"international journal"を謳っているジャーナルです。

この査読者、なんという了見の狭さでしょうか。自分がプラクティスしている米国のアカデミックセンターがイコール世界であり、それに該当しない論文はたとえ英国系の国際ジャーナルであっても出版する意味はない、と示唆しているわけです。

 

残念ながら、米国にはけっこういます、こんな医師(もちろん国際的な視野を持った人もいます。数は少ないけどね)。

 

 

それ以上に残念なのは、このような米国人の謝った世界観を無批判に受け入れてしまう日本人がいること。例えば、

 

  1. 医療を「国際化」するためにアメリカの医学部を誘致して、学生にはアメリカの国家試験を受けてもらう(残念ながら僕の出身地から。。。)。
  2. アメリカの「medical school」制度を始めれば、医学教育はよくなる。
  3. 医療の「国際化」を目指すために、アメリカの基準を導入する。

頻繁に聞きますよね。

これらのnotionが間違っているとは言いません(実は正しいのかもしれない)。ただ僕にはそのロジックが全く理解できないのです(アメリカ=世界であり、それを導入すれば自動的に「国際的」になり質が高くなるという思考回路以外は)。残念です。

来週はSAEM

救急医学における目玉学会といえばACEPとSAEM meetings。

前者はどちらかといえばビジネスと教育が中心。

研究では後者のSAEMが救急のトップと言われています。

 

 

毎年参加していますが、今年はややおっくうな部分があります。

場所がダラス(テキサス在住の人ごめんなさい)というだけでなく、

同時期にATS (American Thoracic Society)カンファレンスがあるから。

 

 

残念ながら、救急研究の最高峰であるSAEMにおいてもその質は他スペシャリティーの学会の質には遠く及びません。春に発表で行ったAAAAI (アレルギー、免疫の学会)の質の高さには衝撃を受けました。SAEMのoral発表のレベルでAAAAIに太刀打ちできるのはいくつあるのか。。。

 

もちろん、救急はいわゆる臨床研究が主体であり、他学会は基礎研究や病態メカニズムに視野があることという違いがあります(僕に理解できないから質が高く見える?)。といっても病態メカニズムの解明まで見据えてclinical trialや疫学研究をしていく懐の深さに大きな差を感じます。両者には、莫大な研究者の厚み、歴史、そして資金力に彼我の違いがあるようです。

 

 

救急の研究は他スペシャリティーに比較して(少なくともATS, AAAAIレベル)おそらく5年(ひょっとしたら10年は)は遅れているでしょう。そしてますます離されていく可能性もあります。僕もどこまで寄与できるでしょうか。

 

 

 

来週のSAEM meeting, 自分の発表 & 委員会があるので参加。

そして学会の最大の意味はnetworkingですから。

危機的状況

あらゆるところで話題ですが、

米国biomedical研究の経済状況は危機的。

 

研究助成金の獲得先は様々ですが、大きなスポンサーはやはりNIH。これはNIHの中でもtop 3の大きな機関"National Institue of Allergy and Infectious Diseases(NIAID)"の状況がメールで送られてきました。

 

NIAID Paylines 2014によると

2014年度のR01 (もっともメジャーな研究助成金)はトップ9%のみが獲得。

若手研究者でもトップ13%のみに助成。

「それなら年に10回応募すればいいんでしょ」と思うでしょうが、それは最悪の戦略です。まずこの倍率をくぐり抜けるリサーチクエスチョンを10個つくるのはまず不可能。そして1つ1つの応募に数週間から1ヶ月かかるのは普通のこと。質の劣る助成金申請しているだけで他の仕事ができなくなります。

 

基本的に、研究者の給料は自分でこのような外部資金を獲得して払うことになります。つまり研究助成金が取れなければ、研究者として生活していくことはできません。もちろん自分のスタッフの給料もそこから払われます。

 

 

走り続けなければ倒れてしまう研究者の生活は、まさに自転車操業の個人商店主みたいなもの。さらにこの大不況は極めて危機的です。