ハーバードER記

Ars longa, vita brevis.

救急医の燃え尽き

これは日本でも深刻な問題ですよね。


今月のAnnalsでも取り上げられていましたが
この論文(Archives of Internal Medicineより)は、
米国の救急医にとってショッキングな内容。
Burnout and Satisfaction With Work-Life Balance Among US Physicians Relative to the General US Population


結果:
米国の医師は他の職業人と比較して、burnout(燃え尽き)の率が高い(38% vs. 28%)。
さまざまな医師のスペシャリティーの中でも、
とくに「燃え尽き」率ダントツナンバーワン(不名誉なことに)は、



救急医。。。
約3分の2の救急医が「燃え尽き」の症状を示しているのこと。
2位に位置する内科医を数馬身抜いてのトップでした。
これは深刻です。本当に。


何故でしょうか。
救急医の働く時間は不規則ですが、
シフトワークの強みもあります。
労働時間だって、日本の救急医の先生方と比べたらとっても少ない(市中病院なら週平均40時間程度の労働時間)。
シフトだからいい、労働時間が少ないからいい、という単純な問題ではなさそうです。
では、何故?
その問いを突きつけた素晴らしい研究です。全体として、まだ答えのない。



また、救急医それぞれによってもその答えは違い、多彩でしょう。
僕個人的には、
救急外来後にまた悪化するであろう患者
(例:無保険者、薬物中毒、精神疾患合併患者、社会関係資本の乏しい患者。
僕の診る患者の少なくとも半数はこのような患者たちです)
を診ることはストレスになっています。
それは、医師として長期的な解決策を示せていないから。
(短期的な解決だって大事なことは大事ですが)
まさにこのような社会的弱者への短期的医療が、米国救急医療への大きな要請=期待される役割ですが。


ただ僕はこの救急医療システム、ひいては米国の医療システムに疑問を感じざるを得ません。
これを是正していくために、その基礎となる知見を出していくことを
研究者としての1つのライフワークにしていこうと思っています。


これが個人的な「燃え尽き」防止策、になっているのかな。